ブロードバンドを使いこなす(2)
IP電話を導入する
小泉誠二
第2回:IP電話を使う
今回は連載の2回目、企業や個人ともに急速に普及している安い電話、IP電話の話をします。
1月末で830万契約を超えたブロードバンド接続の普及は止まるところを知りません。特に大きな市場を押さえたYahooBBはパソコンショップの店頭や駅前で、白いコートを羽織って大声でモデムの無料配布をするまでになりました。NTTもこれに負けずと販売合戦をくりひろげています。
例えばYahooでBBフォンと呼ばれているのがIP電話で、1年間に既に160万ユーザーを獲得し、個人用IP電話で大きな存在となっております。従来にない距離に依存しない低料金により、爆発的な普及をしております。市外通話や国際電話が多く毎月の料金が多い人には朗報である一方、NTTやKDDIなどにとっては従来の電話サービス収益の減少が予想されております。これもブロードバンドがもたらす「電話」から「IP」(インターネット・プロトコル)へのパラダイムシフトの一面です。
個人が選択するIP電話は2種類のタイプがあります。ひとつは「電話型」と呼ばれる、ADSLなどのモデムに電話の端子があり、そこに従来のアナログの電話をつなぎIP電話ができる簡単な方法です。 もうひとつは「パソコン型」と呼ばれるブロードバンド接続をしたパソコンにヘッドセットや内蔵のマイク・スピーカを使い、パソコン上にダイヤラーソフトを使い電話する方法です。パソコンをブロードバンド接続されている方はすぐに契約すれば使えるようになります。
もっとも主流は使い勝手の点から「電話型」になりそうです。YahooBBフォンの場合、BBフォン同士は無料で通話、国内・外を問わず3分7.5円で通話することが出来ます。
最近OCN、Biglobe、Nifty、So-netなどのISP(インターネット・サービス・プロバイダ)からIP電話サービスが始まっており、Niftyの場合、Biglobe、OCN、So-netなどのIP電話契約者とは無料、国内・外は3分8円で通話することが出来ます。(長距離電話という概念が無いのが興味深いところです)
しかしながらIP電話には制限があります。それは一般電話に対して発信はできますが、IP電話機が電話番号を持っていないため、逆の一般電話からの着信が出来ません。やっと、050で始まる電話番号をつければ着信することが最近スタートしましたが、110や119などの緊急電話、フリーダイヤル、FAX(一部対応は可能)などのサービスが出来ないことも制限として上げられます。結局、発信専用に電話機をもう1台購入して、既存の電話機で一般電話からの着信、フリーダイヤル、FAXを使い、もう1台の電話機でIP電話として発信をしたり、IP電話間の無料通話を使ったりするのが現実的です。(自動的に切り替えるかしこいモデムも出ております)。現在YahooBBフォンと@NiftyフォンなどのISPとの間のIP無料通話は出来ません。
また異なるISP間の無料通話は提携しているISPに限られております。2−3年前から従来の電話契約者同士をつなぐ、「IP中継電話サービス」というのがあり、これは従来の電話機のままで使え、しかも安い通話料金で、各種緊急電話やFAXなどのサービスも提供されます。フュージョン・コミュニケーションというのがこれに当たります。
中小企業がこのIP電話を使わない手は無い。効果的使い方には以下の2つがあります。
一つめは、営業活動などで全国の顧客と電話で商売する場合、電話代が画期的に安くすることが出来ます。特に国際電話で長時間の会議や打ち合わせを行う業務の場合、効果絶大となります。国際電話料を10分の1にした事例もあります。この場合にも個人と同様サービスをフルに使おうとすると2台の電話を使い分けることになります。
二つめは営業拠点が全国に散らばっている拠点間を内線電話として使う場合も非常に有効です。LAN間接続が常時接続していれば電話も無料になります。既に大手の企業などではLAN間接続を使いPBXと呼ばれる電話交換機にボイス・オーバー・IPと呼ばれるアダプターを組み込み、電話コストを大幅に削減しております。
中小企業の場合の実現方法は、少し専門的になりますがインターネットIP-VPNなどIP網(LAN間接続)を構築し、各拠点にIP電話アダプターと言う装置を導入します。社内電話はLANの接続を使い全てタダとなります。また応用展開として会社と営業マンの自宅が同一のIP電話使っていれば、自宅から営業マンが会社の事務所へ電話した場合にも、かけ放題・通話無料となり非常に有効です。
さて、IP電話機へ一般電話から着信可能とするため「050」という番号が導入されました。しかしながら異なる事業者間(BBフォンとISP間)などの相互接続に対してどうなるかは流動的です。さらに、東西NTTとの接続料の問題が残っており、安い料金の維持が難しい可能性も出て来ました。良くなったといわれています音質ですが、高音質を安定的に提供する課題が残っております。
まだIP電話は始まったばかりで課題は山積みですが、高い電話料金から安いIP電話への流れは変わらないと思いますし、これからも急速な普及がされると思います。今まで電話料金は企業や個人でばかにならない金額であり、企業ではIP電話は大きな経費削減の手段となっております。
IP電話の安いというメリットと機能制限を加味して、適切なサービスを選択する賢さが必要です。